ひとこめ

金融業界の末席で。

家計の損益計算書

ひっそりとブログを開設し、なんの自己紹介もなくいきなり記事を書き始める流れになってしまったが、今日は家計の損益計算書について。

家計の管理で、日々の収支を記録して月ごとに集計している人は多いだろう。

私も長い間自分の収支を記録してきたが、あるとき、「すべての収入からすべての支出を引いた数字に、なんの意味があるのだろう」とふと思ってしまった。

もちろん、総収入から総支出を引けば、その月が黒字なのか赤字なのかはざっくり把握できる。

しかし、収支を管理するのは、ただ黒か赤かを知るためだけではなく、収支の問題点を見つけて、日々のお金の流れを改善し、貯蓄を増やすためなんじゃないか。

そこで私は、家計の収支管理をより充実したものにするため、企業の損益計算書を参考にすることにした。

損益計算書とは

損益計算書について一から説明するのは大変なので、とりあえずわかりやすそうなリンクを貼っておく。

損益計算書とは?見方やポイントをまとめて解説|税理士検索freee

損益計算書のポイントを一言でいうと、「いろいろな観点で黒字か赤字かを集計している」ということである。

「総収入から総支出を引いて黒字」みたいなざっくりとした話ではなく、「本業でちゃんと稼げているか」「日常的な活動全体で稼げているか」など、いろいろな切り口で収支を分析している。

これはいいアイデアなのではないかと思い、私は、この損益計算書の思想を家計にも採り入れてみた。

それが、以下に紹介する「家計の損益計算書」である。企業の損益計算書を知らなくても理解できるので、ぜひ読んでみて、参考になれば幸いである。

家計の損益計算書の項目

細かい説明は後回しにして、まずは結論から。

家計の損益計算書では、以下の収支項目を使う。

①本業収入

②本業支出

③定型支出

④必要経費

⑤臨時収入

⑥娯楽費

⑦特別収入

⑧特別支出

そして、以下の4つの視点で黒字・赤字を判定する。

本業利益=①-②

生活利益=本業利益-③-④

経常利益=生活利益+⑤-⑥

当月純利益=経常利益+⑦-⑧

では、それぞれの利益・収支項目を説明していく。

本業利益

本業利益=本業収入-本業支出

本業収入とは

「本業収入」とは、「仕事の対価として得られる収入」のこと。

要するに給与や賞与(ボーナス)のことである。

副業をしている人は、副業による収入も含めていいだろう。

(ただ、たまにしか副業をせず、毎月副業収入があるわけではない場合は、後で説明する臨時収入に含めるべきかもしれない)

会社員の場合、額面給与から税や社会保険料などを天引きされ、いろいろな手当が加えられた金額が振り込まれると思う。

理想を言えば、「本業収入」には、天引きや追加をする前の額面金額を書くのが望ましいが、わざわざ給与明細を確認する手間が面倒なので、最終的な振込金額を書いてもいいだろう。

正確にやろうとして挫折するよりは、多少不正確でも継続できるスタイルのほうがいい。

本業支出とは

「本業支出」とは、「仕事のためにかかった支出」のことである。

厳密な線引きを始めるとめんどくさくなるので、ざっくりと「勤務時間中に支出したお金」をひとまとめにしてしまう。

昼ごはん代、夕方のコーヒー代などなど。

また、「勤務時間外でも、勤務のため、勤務関係者のために支出したお金」も含める。

たとえば、スーツやオフィスカジュアルの服を買ったお金。仕事後に職場の人と飲み会をしたお金。職場の人と週末に行ったゴルフのお金。

「え、飲み会やゴルフまで含めるの?」と思うかもしれないが、職場の人との飲み会やゴルフは、人間関係の構築や情報交換など、広い意味で「仕事のための支出」と言えるだろう。

では、本業利益とは

本業収入から本業支出を引いた「本業利益」は、「仕事によって得られた真の収入」と言える。

「仕事の収入」と聞くとどうしても給与額を想像してしまうが、たとえば、一般的に高給のイメージがある総合商社では、飲み会があまりにも多くて出費がかさむと言われている。

つまり、いくら給与が高くても、飲み会が多いとか、超高級スーツを着ないと見劣りするとか、そういう場合は実質的な収入はもっと低くなる。

「本業利益」は、そういう事情を考慮した「真の給与水準」を示すものである。

生活利益

生活利益=本業利益-定型支出-必要経費

定型支出

「定型支出」とは、毎月必ず一定額を払わなければならない支出のことである。

家賃、水道光熱費スマホ通信費、新聞購読料、積立投資など。

LINE MUSICなどの娯楽目的のものでも、毎月定型的に支出するなら、含めていいかもしれない。

また、水道光熱費スマホ通信費は毎月多少金額が上下するが、大まかに同じならば、ここでは定型支出に含めてしまっていい。

生活経費

「生活経費」とは、生活をするために必要な支出のことである。

食費、日用品、医療費、交通費、文房具代、自己啓発費など。

もちろん、「食費」と言っても、毎晩高級レストランに行く場合はそれが「生活のために必要な支出」と言えるのかは微妙だが、まあそのへんは神経質にならず、多少の贅沢が含まれていてもざっくりと「生活経費」でいいだろう。

世間的な常識はともかく、そういう食事がその人にとって「当たり前」ならば、その人にとっては立派な「必要経費」である。

では、生活利益とは

定型支出も生活経費も「生活のために毎月必ずかかるお金」だから、「生活利益」は、そうした毎月必ずかかるお金をきちんと給与でまかなえているかを示すものである。

「毎月必ずかかるお金」を「毎月必ず入ってくる収入」でまかなえていなければ、生活は不安定になってしまう。

生活利益があまりにも少ない場合、現在の生活水準が給与に見合っていない可能性が高い。

食事のレベルを下げるとか、LINE MUSICを解約するとか、積立投資の金額を減らすとか、構造的な支出の見直しが必要である。

経常利益

経常利益=生活利益+臨時収入-娯楽費

臨時収入

「臨時収入」とは、「本業収入」にあたらない収入全般のことである。

後で説明する「特別収入」との区別が若干曖昧であるが、企業の損益計算書の理念に従うならば、「突発的な収入が特別収入、突発的でない収入が臨時収入」である。

もう少し直感的に言うと、「日常生活を送っていれば、まあそういう収入はよくあるよね」というのが「臨時収入」にあたる。

お小遣い、ギフト券、株の配当金、預金や債券の利息などが臨時収入にあたる。

娯楽費

「娯楽費」とは、まさに娯楽のための支出である。

日々の支出のうち、生活経費にあたらない支出全般を指す。

一人でやったことでも、恋人とやったことでも、友人とやったことでも、およそ娯楽的であるものは全部娯楽費である。

では、経常利益とは

「経常利益」は、日常的に生じる収入(給与や臨時収入全般)から日常的に生じる支出(必要経費も娯楽費も全部含める)を引いた利益である。

つまり、「いまのような生活を送っていれば継続的に生み出される利益」を指す。

経常利益は企業会計の世界にも登場する言葉だが、「経常」は「常に・継続的に」という意味なので、「常に生み出される利益」ということである。

基本的に、家計では、経常収入が恒常的にプラスであればおおむね健全に収支が管理されていると言えそうである。

当月純利益

当月純利益=経常利益+特別収入-特別支出

特別収入・特別支出

特別収入・特別支出とは、「その月に突発的に生じてしまった収入・支出」のことである。

先ほど臨時収入のときにも説明したが、「まあ、日常生活を送っていれば、そういうのあるよね」と言えないものが特別収入・特別損失である。

特別収入だと、株で一発儲けました、宝くじを一発当てました、家や車を売ったら儲かりました、みたいなものが含まれる。

特別支出では、株で大損しました、お金を盗まれました、罰金を払いました、家をリフォームしました、みたいなものが含まれるだろう。

では、当月純利益とは

あらためて説明するまでもないが、「当月純利益」とは「その月に生じたすべての収入からすべての支出を引いたもの」である。

この記事の最初で触れたような「一般的な家計簿」で計算されるのは、この当月純利益の値である。

当月純利益もプラスであるのに越したことはないが、特別損失のような突発的な事由により、一時的に当月純利益がマイナスになることはありうる。

しかし、お金を盗まれてしまったために当月純利益がマイナスになったからと言って「家計管理が下手ですね」とはならないだろう。

経常利益さえプラスであれば、突発的に当月純利益がマイナスになってしまっても割り切ることができる。

逆に、たとえ当月純利益がプラス続きであっても、生活利益や経常利益のマイナスが続いているのであれば、生活基盤としては不安定であろう。

おわりに

 ということで、記念すべき第一号記事では、家計の損益計算書について書いてみた。

企業の損益計算書では、複式簿記の考え方が採り入れられていてもう少し複雑な処理が求められる場面もあるが、とりあえずラクに家計を管理するという観点では、こんな感じで十分だろう。

おわり